【2025年12月施行】改正建設業法で義務化された見積書の「5項目内訳明示」とは
2025年12月12日、改正建設業法・入契法が全面施行され、公共工事の見積書(工事費内訳書)に5つの費目の内訳明示が義務化されました。本記事では、新たに加わった「法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金」の3経費を中心に、それぞれの計算方法と令和8年度の最新料率を、積算・事務担当者向けにわかりやすく解説します。
1. 改正で何が変わったのか
2025年12月12日に施行された改正入契法第12条により、公共工事の入札時に提出する工事費内訳書に、次の5項目の内訳明示が義務付けられました。
- 材料費
- 労務費
- 法定福利費(事業主負担分) ←新たに明示義務化
- 安全衛生経費 ←新たに明示義務化
- 建退共掛金(建設業退職金共済) ←新たに明示義務化
従来から内訳書の提出義務はありましたが、記載すべき費目は法令上具体的に指定されていませんでした。今回の改正で、特に後ろの3項目(法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金)が「適正な施工を確保するために不可欠な経費」として明示義務の対象になった点が大きな変更です。
なぜ義務化されたのか
背景には、資材価格の高騰分が工事費に適切に転嫁されず、現場技能者の賃金の原資となる労務費や社会保険の原資がしわ寄せを受けてきた問題があります。各経費を内訳として「見える化」することで、賃上げ・社会保険加入の原資を確保し、適正な価格交渉を促すことが狙いです。
2. 法定福利費の計算方法
法定福利費とは、健康保険・厚生年金・雇用保険などの事業主負担分を指します。基本的な計算式は次のとおりです。
基本の計算式
法定福利費 = 労務費 × 法定保険料率(事業主負担分の合計)
事業主負担分の料率は、令和8年度(2026年度)でおおむね労務費の16〜17%が目安です。主な内訳は以下のとおりで、特に健康保険は協会けんぽの都道府県別料率を用いるため、所在地によって変わります。
| 保険の種類 | 事業主負担分の目安(令和8年度) |
|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ) | 都道府県別料率の1/2(例:東京 約4.93%) |
| 介護保険(40〜64歳) | 1.62%の1/2 = 約0.81% |
| 厚生年金保険 | 18.3%の1/2 = 9.15% |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36%(全額事業主負担) |
| 雇用保険(建設の事業) | 10.5/1000 = 1.05% |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23%の1/2 = 0.115%(令和8年4月分〜) |
労務費の分離が難しい場合は、工事価格 × 工種別の法定福利費の割合(国交省が毎年度公表)で概算する方法も認められています。一般的な土木工事ではおおむね工事価格の3〜4%台です。
3. 安全衛生経費の3区分
安全衛生経費は、国交省「安全衛生経費を内訳明示した見積書の作成手順」(令和6年3月29日)に基づき、次の3区分で計上します。
- ① 個別現場の安全衛生経費(積み上げ):仮囲い・誘導員・現場固有の安全設備など、現場ごとに積み上げる費用。
- ② 技能者にかかる安全衛生経費(率計算):保護具・安全衛生教育費など。労務費や工事金額に経費率を乗じて算定(例:とび工10.23%、機械土工8.9%)。
- ③ 店社の安全衛生経費(率計算):安全大会・店社安全パトロールなど、必要な場合に計上。
4. 建退共掛金の2つの計算方法
建設業退職金共済(建退共)の掛金は、掛金日額320円(令和3年10月改定・現行)を用いて計算します。算定方法は2通りあります。
① 延べ人工がわかる場合(実績ベース)
建退共掛金 = 対象労働者の延べ人工数 × 320円。最も正確な方法で、入札時は工程表から想定人工数を積算します。
② 延べ人工がわからない場合(購入率方式)
建退共掛金 = 総工事費 × 購入率。購入率は工事種別・総工事費区分によって異なり、発注機関や建退共支部の指定値を確認する必要があります。
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法定福利費(令和8年度・47都道府県の料率対応)・安全衛生経費・建退共掛金を入力するだけで内訳明示の金額を算出。見積書への転記用テキストも出力できます。
無料ツールを使ってみる →5. よくある質問
- Q. 民間工事でも内訳明示は必要ですか?
- A. 法令上の義務は公共工事の入札時の工事費内訳書が対象です。ただし改正建設業法では、すべての請負契約で材料費・労務費・必要経費の内訳を記載した見積書の作成が努力義務とされており、民間工事でも内訳明示が標準的な実務になりつつあります。
- Q. 法定福利費は労務費の何%で見ればいいですか?
- A. 事業主負担分の合計でおおむね16〜17%が目安ですが、健康保険の都道府県別料率や、介護保険対象者(40〜64歳)の割合によって変動します。正確には各保険料率を個別に積み上げて算定します。
- Q. 労災保険料は法定福利費に含めますか?
- A. 労災保険料は全額事業主負担ですが、請負金額に対して課される性質のため、見積書の法定福利費には含めないのが一般的です。内訳明示の対象は健康保険・厚生年金・雇用保険の事業主負担分が基本です。
本記事は2026年5月時点の公開情報(国土交通省・厚生労働省・全国健康保険協会等)に基づいて作成しています。料率・掛金日額・各種割合は年度改定があり、自治体発注では発注機関が独自の様式・割合を定めている場合があります。実際の見積書作成にあたっては、必ず最新の公表値と発注機関の指定様式をご確認ください。