安全衛生経費の計算方法|何パーセント?3区分の算出手順と計算例
見積書に内訳明示する安全衛生経費は「何パーセントで計算すればいいのか」と迷いやすい項目です。結論から言うと、一律の法定率はなく、国交省の「安全衛生経費を内訳明示した見積書の作成手順」(令和6年3月29日)に沿って①積み上げ ②率計算 ③店社経費の3区分で算出します。本記事では各区分の計算方法と経費率の根拠、具体的な計算例を実務者向けに解説します。
1. 安全衛生経費とは
安全衛生経費とは、建設現場の労働災害を防止するために必要な費用の総称です。保護帽・墜落制止用器具・安全靴などの保護具、安全衛生教育や健康診断、仮囲い・開口部養生・交通誘導員といった現場の安全対策費が含まれます。
2025年12月12日施行の改正入契法により、公共工事の入札時に提出する工事費内訳書には、材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金の5項目の内訳明示が義務化されました。安全衛生経費は「適正な施工を確保するために不可欠な経費」として法令上位置づけられており、発注者が一方的に削ることはできない正当な原価です。改正の全体像は5項目内訳明示の解説記事を参照してください。
2. 計算方法:国交省「作成手順」の3区分
国交省「安全衛生経費を内訳明示した見積書の作成手順」(令和6年3月29日・国不専建第63号)では、安全衛生経費を次の3区分で算出します。
① 個別工事現場の安全衛生経費(積み上げ計算)
仮囲い・立入禁止措置・開口部養生・交通誘導員・安全衛生管理活動費など、その現場固有の対策費用です。元請・下請間で「安全衛生対策項目の確認表」を取り交わし、下請が費用負担する項目を対象に、数量 × 単価で個別に積み上げます。
積み上げの基本式
安全衛生経費A = 延べ人工数 × 単価
安全衛生経費B = 安全用具数量 × 単価 …(項目ごとに積算して合計)
② 技能者にかかる安全衛生経費(積み上げ or 率計算)
保護帽・墜落制止用器具・安全靴・空調服などの保護具や、安全衛生教育・技能講習・健康診断の費用です。原則は「使用する延べ人工数 × (保護具単価 ÷ 耐用日数)」の積み上げですが、個別の積算が困難な場合は率計算が認められています。
率計算の式
安全衛生経費 = 労務費(または工事金額)× 安全衛生経費率
※工事金額を基礎とする場合は、値引き・法定福利費加算前の金額を用います
③ 店社の安全衛生経費(率計算)
安全大会の開催費、店社安全パトロール、本社の安全衛生管理部門の費用など、現場ではなく会社(店社)で支出する安全経費です。必要な場合に、自社実績に基づく割合で計上します。
3. 何パーセント?経費率の根拠と目安
「安全衛生経費は何パーセント」という一律の法定率はありません。率計算に使う「安全衛生経費率」は、建設技能者1人あたりの年間安全衛生経費(保護具・教育・健診等)を年収(公共工事設計労務単価 × 年間労働日数)で割った値として算出されます。
参考値として公表されている代表的な率には次のようなものがあります。
| 職種・区分 | 経費率(労務費に対する割合) |
|---|---|
| 仮設工事・とび工 | 10.23% |
| 左官工事 | 9.0% |
| 土木・運転手(特殊) | 8.9% |
おおむね労務費の8〜11%程度が目安ですが、職種・現場条件により異なります。また自社の実績(昨年度の安全衛生関連支出 ÷ 昨年度の労務費)から独自の率を算出する方法も認められています。この場合は算出根拠と含まれる項目の明示が必要です。
重要:率だけで済ませない
国交省の手順では、現場条件で実費を出せる項目は積み上げ計算が大原則で、率計算は個別の数量化が難しい項目の補完です。「工事費の一律◯%」だけで計上すると、現場で必要な対策費が不足したり、根拠を問われた際に説明できなくなります。①の積み上げと②の率計算を組み合わせるのが実務の基本形です。
4. 計算例(労務費150万円の場合)
条件:請負金額500万円・労務費150万円・仮設工事(とび工)
② 技能者にかかる安全衛生経費(率計算・とび工10.23%)
1,500,000円 × 10.23% = 153,450円
① 個別現場の積み上げ(例:開口部養生・誘導員等)= 現場条件に応じて加算
③ 店社経費 = 必要な場合のみ計上
→ この例では②だけで 153,450円 を安全衛生経費として内訳明示します。①の積み上げがあればさらに加算します。
5. 法定福利費との違い
見積書で並んで登場するため混同されがちですが、両者はまったく別の費用です。
| 安全衛生経費 | 法定福利費 | |
|---|---|---|
| 内容 | 保護具・安全教育・現場の安全設備など労働災害防止の活動費用 | 健康保険・厚生年金・雇用保険など社会保険料の事業主負担分 |
| 目安 | 労務費の約8〜11%(職種による) | 労務費の約16〜17%(令和8年度) |
| 根拠 | 国交省「作成手順」(R6.3.29) | 法定保険料率(国交省通知 国不建キ第15号) |
法定福利費の計算方法は都道府県別の料率一覧つき解説記事で詳しくまとめています。
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①積み上げ・②率計算(とび工10.23%等のプリセット付き)・③店社の3区分で安全衛生経費を算出。法定福利費・建退共掛金もまとめて内訳明示の金額が出せます。
無料ツールを使ってみる →6. よくある質問
- Q. 安全衛生経費は工事費の何パーセントですか?
- A. 一律の法定率はありません。率計算の参考値として、とび工10.23%など職種別の経費率(労務費に対する割合)が公表されており、おおむね労務費の8〜11%程度が目安です。ただし原則は積み上げ計算で、率は補完的に使います。
- Q. 「一式」でまとめて計上してもいいですか?
- A. 避けるべきです。公共工事の内訳書では安全衛生経費の明示が義務化されており、民間工事でも数量×単価の根拠を示すことが推奨されています。総額一式では発注者との協議根拠にならず、不当な値引きを防げません。
- Q. 下請に再発注する場合の安全衛生経費は?
- A. 再下請負人が必要とする安全衛生経費も含めて見積書に計上し、注文者は再下請業者に適切に支払う必要があります。自社施工分の安全衛生経費を適正に算出すれば、再下請代金に含まれる分も反映されると整理されています。
本記事は国土交通省「安全衛生経費を内訳明示した見積書の作成手順」(令和6年3月29日・国不専建第63号)等の公開情報(2026年7月時点)に基づいて作成しています。経費率は職種・現場条件・年度により異なるため、実際の見積書作成にあたっては最新の公表値と発注機関・元請の指定様式をご確認ください。